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ハツコイー5年後

第2章 偶然の再開をドラマに出来るかはキャラ次第ー山崎退


普段、クジ運とかはまったく無い方なのに、こんな時だけ当たるのは、神様の計らいなのかイタズラなのか。

仕事終わりに寄ったコンビニで、クジ引きをしたらアイスが当たった。しかも、2つに分けて食べるアレだ。一緒に食べる人がいたら、缶ビールと弁当1つなんて買わないよ。
でもまぁそんな事、店員には1ミリも関係ないから、曖昧な笑顔でレジ袋を受け取った時だった。
「山崎君?」
柔らかな声に振り向いた僕は、記憶の中の面影を残しつつ、確実に綺麗になった君に本気で見惚れた。
「…さん、久しぶりだね」

ごく自然に、アイスを一緒に食べないかと言えるくらいには、僕も大人になったのかもしれない。
コンビニの前に置かれたベンチに腰かけて、半分に切ったアイスを受け取った君は、それだけは学生時代のままの、子どもみたいな笑顔をしてくれた。
「甘い物控えてるのになぁ。まぁ良いか、せっかく山崎君がくれたし、今日は特別」
そう言ってプラスチックの容器を吸う、君の唇から慌てて目をそらす。
「なんで控えてるの?」
我ながら情けないくらい、バカみたいな質問をすると、君はピースサインを示した。
「だって後2週間で式だよ。ドレスは綺麗に着たいじゃん」
「あぁ…そうか、そうだね。もうすぐ式か」
楽しみだよ、という社交辞令みたいなセリフは、アイスと一緒に飲み込んでしまった。
「山崎君、出席ありがとね」
君はニコニコ笑う。
僕はなんとか笑い返す。
「Z組の人は、けっこう来てくれるよ。神楽ちゃんには友人代表のスピーチも頼んじゃったし」
「そうなんだ。それは…」
楽しみだね。というセリフは、今度はなんとか口に出せた。
「今日もね、スピーチの打ち合わせというか、してたらなんかいろいろ思い出してさ、懐かしくなっちゃった。だから、山崎君に逢えて嬉しかったよ」
まったく、そんな事を微笑みながら言わないでよ。僕が君を好きだった事も知らないで。
隣の席で過ごしたあの1年、どんな気持ちだったかなんて、気づいてもいないんだろう。
「…学生時代なんて、思い出にあるのが1番いいよ」
口の中でつぶやいただけのはずなのに、君は何故かこういう時だけ勘が良い。
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