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乱世の華

第1章 恋の始まり


舞「何だかよくわからないけど、とにかく帰れるってことだよね。よかった......!」

佐助「ただ...それまでの三か月、君はここにとどまっておいた方が良さそうだ」

舞「安土城に?どうして...」

佐助「俺たちがいるのは戦が絶えない乱世だ。城の外は物騒だし...
君は織田軍の武将たちにずいぶん気に入られてるみたいだから」

舞「たしかに、逃げ出してもまた追いかけられて捕まるだろうな...」

佐助「時々ようすを見に来る。困ったら狼煙(のろし)でも上げて」

舞「わかった...。狼煙の上げ方勉強しとく」

佐助「それから......この時代の人相手に、深入りはしないよう気をつけて」

舞「深入りって?」

佐助「端的に言うと、恋愛感情を抱くことだ。いずれ未来へ帰る足かせになる」

舞「恋愛!?ないない、絶対。武将と恋愛なんてありえないよ...」

佐助「......だったらいいけど。それから、現代から来たって素性も隠しておいた方が無難だ」

舞「そうだね。きっと信じてもらえないし、妖しいヤツだと思われるよね」

(信長様と三成くんも、冗談だと思ったみたいだし...)

佐助「俺は仕事で安土城城下に雇い主と滞在することになったから、すぐに駆けつけられる」

舞「仕事って...」

尋ねかけた時、佐助君がはっと視線を障子のほうへと走らせた。

(......!誰か来たのかな)

佐助「......続きはまた今度。じゃ」

素早く口元を隠し佐助くんが窓から外へ飛び出したあと、障子が開いた。

光秀「逃げ切れなかったらしいな、お前」

(この人は......明智光秀、だっけ)

光秀「信長様がお呼びだ。お前の顔を見たいそうだ」

舞「わ、わかりました...」

踵(きびす)を返す光秀さんを、慌てて追いかける。

(元の歴史だと、この人が本能寺の変の犯人なんだよね。信長様を襲ったのは別の人だったみたいだけど、やっぱり謀反を企んでるのかな...)

隣を歩きながら、次第に動きが固くなる。

光秀「そんなに強く握ったら怪我をするぞ」

(え?)

無自覚に握りしめていた私の手を、光秀さんが掴んで引き寄せる。

手の甲にキスをされ、私は慌てて飛びのいた。


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