第1章 恋の始まり
三成「ありがとうございます。では、ごゆるりとお休みくださいね」
優しく告げて、三成くんは部屋を出ていった。
(佐助くんとははぐれちゃったし、これからどうしたらいいんだろう......)
畳の上にへたり込み、手離さないでいたバッグを開いてみる。
『イケメン武将トラベルガイド』、携帯電話、財布、自宅の鍵、ポーチ...
試作品のぬいぐるみ、『くまたん』が頭を覗かせていた。
(採用面接の時、服のパターンと一緒にサンプルとして持って行って入れっぱなしにしてたな...
ようやく夢が叶ってデザイナーとして頑張ろうって時に、どうして...)
ため息がこぼれたその時......カタッっと上から音がした。
(何の音......?)
天井を見上げると、戸板が外れ......見知った人がひょっこり顔を出した。
佐助「お邪魔します、舞さん」
舞「佐助くん!?追いかけてきてくれたの...?」
佐助「ああ。人が来たから姿を隠したけど、後をつけてきた」
舞「ありがとう...!」
慣れた様子で天井裏から飛び降り、佐助くんは口元の布を下ろす。
佐助「陰から見てて事情はだいたいわかった。君、大変なことになってるな」
舞「佐助くんこそ四年間色々あったんだね...。今の、完璧に忍者だったよ」
佐助「ありがとう。それより、さっきは大事なことを伝えそびれた」
(大事なこと...?)
佐助「こっちに来てから俺は、現代に帰る方法を研究し続けていて...
つい最近、一定の周期でワームホールが出現することを解明した」
舞「え!?それじゃもしかして...」
佐助「大きな声は出さないで。俺はここで見つかるとちょっとまずい」
(そっか。佐助くんはこの城の人じゃないし、どう見ても忍者だし、見つかったら捕まるよね)
佐助「端的に説明すると...俺たちには現代に帰る方法があるってことだ」
(現代に帰れる......?)
佐助「根拠や原理は未解明だけど、データを基に計算すると...
次にワームホールが出現するのが三か月後だとわかった。
出現場所は調査中だけど、うまく接触できれば......現代に戻れる可能性が高い」