第1章 恋の始まり
秀吉「女に誘わせたりできるか。落ち着いたら文(ふみ)を送る」
町娘たち「いつまでも待ってます!」
政宗さんと馬に乗ったまま騒ぎを見守り、釈然としない気持ちが広がった。
舞「私の時と態度違いすぎでしょ...」
政宗「秀吉はアレが地だ。お前だけは別らしいが」
舞「普段は優しい人ってこと?なんだかピンとこないけど...」
政宗「舞も舞だ。人たらしの秀吉に懐かない女も珍しい」
肩越しに覗き込み、政宗さんが好奇心に満ちた目を向ける。
政宗「お前は......一体、何者だ?」
(何者だって言われても...っ)
鼻先が触れそうなほど距離が近づき、体を強張らせたその時...
三成「お帰りなさいませ、秀吉様、政宗様」
???「............」
(三成さん、先に着いてたんだ。隣にいる人は初めて見るな。
信長様も......きっともう城にいるってことだよね)
私の緊張に気付く様子もなく、政宗さんはどこか上機嫌に目を細めた。
政宗「家康が出迎えに顔を見せるとは思わなかった。珍しいことがあるもんだな」
舞「え、家康って!」
政宗「三成の隣で仏頂面してるお得だ。ちょうどいい、挨拶しとけ」
馬から降りた後、政宗さんに当然のような顔で手を引かれ、町娘たちの間を縫い、三成さんともう一人の男性が待つ門前へ向かった。
三成「お待ちしていました、舞様」
(癒されるな、この笑顔。波乱続きだから余計に沁みる...。って、それより......!)
舞「私、信長様に会うつもりはないんですが...」
家康「......弱そうな女」
私の言葉をさえぎって、家康と呼ばれた男性が眉をひそめる。
家康「あんたが、舞?」
舞「はい、初めまして...。あなたは家康さん......ですよね」
家康「だったら、何」
舞「な、何って言われるとこまるんですが...」
私を見つめる家康さんの瞳は、氷のように冷ややかだ。
(この人ってきっと、徳川家康だよね?こんな性格だったの...?
顔立ちが綺麗な分、冷たくされるとダメージ大きい...)
秀吉「家康、それで出迎えのつもりか?笑顔のひとつでも見せろよ」