第1章 恋の始まり
舞「でも、なんで忍者になってるの?戦国時代で修行したってこと?」
佐助「ああ。無職ではいられないから手に職をつけた」
(すごい適応能力...)
呆れる私に、佐助君が手を差し伸べる。
佐助「そういうわけで俺は、ある武将たちのもとで働いてる。君も一緒に来ればいい。帰る方法は、必ず俺が見つける」
(ちょっと変わってるけど......今、佐助君以外に頼れる相手はいない)
手を取ろうとした、次の瞬間...
秀吉の声「舞、どこだ?」
(この声......秀吉さん!?)
佐助「......」
ふと険しい表情を浮かべ、佐助君が闇に姿を溶け込ませ消えてしまう。
(え、嘘でしょ!?大事な時に忍術なんて披露しないでよ...っ)
声を上げる間もなく、大きな馬が二頭近づいてきた。
秀吉「ようやく見つけた」
舞「う...」
馬に乗った秀吉さんに見下ろされて、唇を噛む。
秀吉「訳のわからない理由で御館様の御前から姿をくらますとは...無礼にも程がある」
舞「そんなこと言われても...!『俺の女になれ』なんて命令聞けないよ」
大声で言い返した時、もう一頭の馬の上から笑い声が聞こえてきた。
???「お前が舞か。肝の据わった女だな。信長様に食ってかかったって話は本当らしい」
舞「今度はだれ...?また武将なの!?」
やけになって叫ぶ私に、眼帯で右目を隠した男性が馬上から腕を伸ばす。
???「その通りだが、そこじゃ話がしにくいな」
舞「え...?わっ!?」
片腕で軽々引き上げられ、私は彼の馬にのせられてしまった。
胸元に抱き寄せられ、鋭く好戦的な笑みが目の前に迫る。
政宗「伊達政宗だ。覚えろ、舞」
(伊達政宗!?ってことは、やっぱり武将!?)
秀吉「政宗は信長様と同盟を組んでいる武将で、奥州の名家、伊達家の当主だ」
隣の馬上から、秀吉さんが生真面目に付け加える。
舞「紹介ありがとうございます。でももう降ろしてください...!」
政宗「落ち着けよ。馬が怯えるだろ?」
舞「怯えてるのは私の方です...!」
政宗「確かにそうだな」
政宗さんは私を離すどころか、手綱を勢いよくしならせる。