第1章 恋の始まり
佐助「君と同じ現代人だ」
混乱する私に、佐助君はこれまでの出来事をゆっくりと語り始めた。
(目まいがしてきた...)
話を聞き終え、私は切り株に座りこんだ。
舞「つまり、あの雷が原因で時空が歪んで、私たちはタイムスリップしちゃったってこと?」
佐助「ああ。原理の説明は省くけど、大まかな解釈はそれで合ってる。
で、俺は君と一緒にタイムスリップして、今から四百年前の戦国時代に飛ばされたんだ。
この四年間で分かったんだけど......ここは、俺たちが学校で習った戦国時代とは違ってる」
(えっ、どういうこと!?)
驚く私に、佐助君が説明してくれたことによると...
佐助君がタイムスリップした先は、上杉謙信が倒れかけた現場で...
私が織田信長を助けたのと同じように、上杉謙信の命を助けたらしい。
日本史の通りなら、その時に上杉謙信は死んでいたはずなのに。
その上同じように、本来は死んでいるはずの武田信玄という武将も、この世界では生きているのだと、佐助君は教えてくれた。
舞「信じられない...。めちゃくちゃだよ」
佐助「でも、事実なんだ。ここは俺たちの知ってる戦国時代じゃない。
タイムスリップした瞬間に時空が歪んで、歴史が変わったんだ」
(タイムスリップ...別の歴史って...まるでSF映画だ)
佐助「俺は大学で宇宙物理学を専攻してて、個人的にタイムスリップ理論を研究してた。
ワームホール出現のパターンと条件を割り出すことに成功して...
あの日あの場所で、自分の研究が立証できないか考え込んでたんだ」
(佐助君は私と同じ現代人だけど、武将と同じレベルで変わってるな)
佐助「同じ場に居合せてた舞さんもタイムズリップしただろうと予想して探してたけど...
俺より四年あとに飛ばされてたのは想定外だった」
舞「夢じゃないんだよね、これ...」
佐助「ああ、幸運にも。自分の目で戦国武将を見られるとは思わなかった」
舞「え、幸運...?」
佐助「親の影響で日本史は昔から好きなんだ。『佐助』って名前も猿飛佐助からとったらしい。せっかくだから今は『猿飛佐助』と名乗ってる。架空の人物だし歴史に影響しないだろうから」