第1章 恋の始まり
色香な眼差しを向けられ口ごもると、背後から声が響いた。
???「よくすらすら軽薄な口説き文句が出てくるものだな」
信玄「ただの本音だよ、謙信」
(『謙信』『信玄』って...。まさか、この人たちも......?)
息を呑んだ時、また一人、男の人が茂みの中から物音も立てずに姿を見せた。
???「謙信様、信玄様、お待たせしました。本能寺の火は消し止められたようです」
(今度は忍者!?)
謙信「偵察ご苦労だった、佐助。信長は...生き延びたのだな」
佐助「はい」
(この人たち、信長様と知り合いなの...?)
信玄「相変わらず悪運の強い男だ」
幸 「............」
(何、この空気...。さっきまで、和気あいあいって感じだったのに。ここにいる人たちは、信長様の敵ってこと...?)
緊迫した空気の中、口もきけないでいると...不意に、忍者の目が私に向けられた。
佐助「......!君は...」
舞「え...?私がどうかしましたか?」
謙信「偶然行き合っただけの女だが...知り合いか?」
佐助「...いえ、なんでもありません。迷い子のようですね。俺が里まで送って行きます」
信玄「佐助、抜け駆けするつもりかー?」
佐助「茶化してないで、信玄様たちは先に町へお戻りください」
短く告げた後、忍者は私の手をそっと掴んで歩き出す。
舞「ち、ちょっと待ってください。私、実は里の者じゃ..」
佐助「知ってる。俺は君をずっと待ってた」
(私を待ってた...?待ってたってどういうこと...!?)
混乱する私を森の奥へ連れ込むと、忍者は顔を覆う装束を取り払った。
佐助「俺の顔に見覚えはない?」
舞「あ!あなたは...」
。、。、。、。、。、。、。、。、。、。、。、。、。、。
???「大丈夫ですか?傘、ありますか」
「!君、危な......」
。、。、。、。、。、。、。、。、。、。、。、。、。、。
舞「石碑の前にいた大学生!?」
佐助「正確には大学院生だ。だけど覚えてくれていてよかった。話が早い」
舞「あなたもタイムスリップしてきたの!?しかもどうして忍者の格好なんて...っ」
佐助「順を追って説明する。俺の名前は佐助と言って......」