第2章 犬の後悔
綺麗な長い髪
ピンクの唇
優美で可憐なその人
僕の瞳に焼き付いて離れない人
だけど今はただ僕を苦しめる人
『はーちゃん。』
『砕けてきたの?』
屋上の秋風に吹かれてながら夕日を見たまま
僕の幼馴染はそう言った
『……うん。』
『諦めるの?』
『……うん。』
『御曹司には勝てなかったのか。』
『……多分。』
『で、尻尾巻いて逃げるのか。』
『意地悪しないでよ。傷付いてるんだから。』
『じゃああたしに懐かなきゃいいじゃない。』
『ひどいな…冷たいよはーちゃん。僕に優しくしてくれるのなんてはーちゃんくらいなのに。』
『やめてよね。そんな顔でそんなこと言うの。』
冗談で言ったつもりだった
いつもなら笑ってからかいかえすところなのに
はーちゃんは怒ってるみたいだった
『ごめん。はーちゃん、俺なんか気に障ること言った?』
『ちょっと、やなことあってイライラしてただけ。当たってごめん。あたし先帰る。』
『そうなの?気づかなくてごめんね。いつもはーちゃん頼ってるし。本当にごめん。』
『長太郎は悪くないし。こちらこそごめんね。』
そう言ってはーちゃんは屋上の鉄扉から出て行ってしまった
自己嫌悪
大事な幼馴染なのに気づきもしないで
そりゃ失恋の愚痴なんて聞きたくないよな
鈍感だな…俺。