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【イケメン戦国】月の兎は冬に焦がれる

第14章 自由主義






ぱちり、と目を開けてみると一面の闇だった。
闇の向こうに目を凝らしてみると、ぼんやりと、恐らく自分の部屋にいるのだろうとわかった。
確か謙信様のお部屋を飛び出したあと、厨へ行って…
自棄酒でもするかって酒瓶持って、庭を見渡せる縁側で鼻を啜りながら呑んで…それから?



その辺で途切れた記憶を手繰り寄せるように集中すると、枕元からぷーぷーと、兎が鼻を鳴らす音。
それでもう、誰がここに運んでくれたかなんて一目瞭然だった。



その事実に、暫く愕然とする。
放っておいてくれたらいいのに、でも、途方もないほど嬉しくてどうしようもない。
出会えた事、今こうして一緒にいれること、荒々しくも触れてもらえること、例え代わりであったとしても本当に嬉しいのに、それ以上に哀しくて仕方がない。



じわじわと目頭が熱くなって、堪えようとひとまず身体を起こしてみる。
そしてほんの一筋、襖の間から射し込む光に気付いた。



枕元にいるのは誰だろう、梅ちゃんだろうか。
起こしてしまわないようにそっと褥を抜け出し、光に誘われるようにゆっくりと襖を開ける──



きっと一番高い場所にある月の光が、さらさらと南の空から流れ込む。
暫くその姿に見惚れて、光を追うように下へと目線を下げていく…
そして、端っこの方の人陰に気づき。
思わぬことに、びくり、と身を震わせる。



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