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【イケメン戦国】月の兎は冬に焦がれる

第12章 合理主義






外観より思いのほか奥へと広がっているその建物を、謙信様に手を引かれるまま進む。
相変わらず照明は薄暗く、少しの物音も立てるのをはばかられる様な、独特の雰囲気。
履物を脱いだ足がぺたぺたとなって、誰が相手ともわからないけれど恐縮する。


謙信様は相変わらず何も言わないし、此方を見ようともしない。
勝手に城を抜け出した事か、捕まったことか、はたまたそのどちらもか…
加えて、前々からの険悪なやり取りの事もあるだろうか?


何かに怒っておられる事は間違いなくて、なんとか許して欲しいけれど口を挟むタイミングが見つからない。
だからせめて、抵抗せずに着いて歩いているつもりだけれど…縺れる足が上手く動かせなくて、謙信様に引き摺られるような格好になっている。


誤解されていないといいな、なんて考える私の目に、ようやく終点が見えてきた。
行き止まりには、なんとも言えない朱色の襖。
黒い枠打ちとのコントラストがぎらぎらと目に痛い。
お世辞にもセンスは良くないな、なんて思っている私を他所に、謙信様は真っ直ぐ迷いもせず進み。





寄りによって、その部屋の襖を思い切りよく開け放つ──



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