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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第3章 初めての巡回-ジユウ-



しばらくしてツグミちゃんは諦めたような眼差しを尾崎さんに向けると、彼が頷いた。



「ではこれで失礼します。ご協力どうも有難うございました」



「有難うございました…」



挨拶し、店から出ようとした時。



どんっ



「あ、済みません!余所見してて…」



「いえ、こちらこそすみません」



私は頭を下げ、店の外に出た。



✤ ✤ ✤


「尾崎さん、さっきは有難うございました」



「辞めたくなった?」



優しく聞いてきた尾崎さんの言葉に、私は首を横に振った。



「とんでもない。逆にメンタルが鍛えられそうで丁度いいです」



「やっぱり立花は凄い。あの笹乞さんの言葉に動じることなく言い返してたし」



「あそこまで貶されたら普通は腹が立って怒りそうなもんだけどな」



「自分のことを言われるのは平気です。それに思ったことを素直に言っただけなので」



「それでも詩遠ちゃんは強いわ。私なんて笹乞さんの放つ空気に圧倒されちゃうもの…」



「私だって強くなんかないよ。自分に負けないように頑張ってるだけ。そういえば彼はこの店の店主なんですか?」



「笹乞藤一郎。もう記憶から消したいかも知れないけど、残念ながら足繁く通うことになると思う。顔と名前と店の場所だけでいいから覚えておいてくれ。別に愛想良くしなくてもいいから」



「わかりました」



「まぁ杙梛さんみたいな奴ばっかじゃないってことだよ。ただまぁ、正直言うとあの笹乞って奴は相当陰険だと思うけどな」



「あの人って作家さんでもあるんですよ」



「話の内容からしてそうなのかなとは思いました。でもあの…最後の本というのは?」



「この前自殺した首相の息子が読んでいた本は、あの笹乞のなんだよ」



「笹乞さんの…?」



「残念ながら最近は落ち目っぽいけどな」



「あの人が書いた本が稀モノだったということですよね?」



「そうね」



「ただ、作家名とその本まで把握しても、少なくとも『書いた』ということだけであいつが罰せられることはない」



「もちろん、もう二度と自筆の本を書くなとも言えないの…──今の法律では」



「もしかして…そのことを辛く思って、あんな態度なんでしょうか」



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