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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第3章 初めての巡回-ジユウ-



「(それでも…)」



尾崎さんが私を庇おうと口を開いた時…



「私は諦めませんよ」



彼は足を止め、開きかけの口を閉じた。



「笹乞さんの言う通り、人間が本気で空を飛べるなんて思ってません。でも…ずっと『あの場所』で泣き続けている【あの子】は、目の前に空があるのに羽根が折れているせいで飛び立つことが出来ないんです」



また意味不明な事を言う私に対して笹乞さんは訝しげに私を見た。



「だから私は立ち止まるわけにはいきません。例えそれがどんなに困難な道でも、自由になる為なら私は挫けず前に進みます」



自分の思いを真っ直ぐに伝える。その場にいる全員が驚いた顔で、強気な笑みを浮かべる私を見ていた。



「残念でしたね笹乞さん。私はその程度で心が折れたりしませんよ」



ニコッと笑み、持っていた本を閉じる。



「あんた…気持ち悪い」



「自分の気持ちを素直に言っただけです。これで先程の質問の答えになったでしょうか」



「…全然なってないよ。相変わらず意味不明なことばかりだし。ていうか、その笑顔も胡散臭いからやめてくんない」



「(すごく嫌われたな。)」



「笹乞さん」



隣に並んだ尾崎さんが笹乞さんに言う。



「これ以上彼女のことを悪く言うと、流石の俺も黙っていられませんよ」



「(尾崎さん…?)」



「立花は俺達の大事な仲間なので、傷付けることは言わないでもらえますか?」



少し口調の強い尾崎さんの言葉に
笹乞さんはぐっと眉を顰めた。



「…──笹乞さん。今日は自筆の本はないんですか?」



助け舟を出してくれたかのように鴻上さんが本の話に触れる。



「ないに決まってるだろ。あれが最後の一冊だったんだから」



「(…最後?)」



「また執筆されるご予定は?」



「どうしてそんなことをあんた達に話さないといけないわけ?」



「参考までに」



「…残念ながら、ボクは大衆に乞われるようなご大層な作家じゃないからね。また何か思いついた時にでも書くよ」



「そうですか」



尾崎さんがちらりとツグミちゃんを見る。



「(稀モノ、見つからないのかな…)」



きっとツグミちゃんは不安に押し潰されそうになっている。必死に視線を巡らせて稀モノがないかを探している。



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