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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第3章 初めての巡回-ジユウ-



「ねぇ」



「はい…?」



笹乞さんに声を掛けられ、顔を向ける。



「あんた何でフクロウに入ったの?」



「え?」



「どこかの華族令嬢っぽいし、身なりの良い育ちしてそうだし、そんなあんたがどんな理由でこの仕事を選んだのか興味が湧いてね」



私がこの仕事を選んだ理由────。



稀モノに影響された人を救いたい



"何も知らない"を言い訳に逃げたくない



ちゃんと現実と向き合って



"知らないことを知る"ために



本に携わる仕事を選んだのが理由だ。



それと……



「…空を、自由に飛びたいんです。」



「は?」



「何事にも囚われず、ちゃんと自分の羽根で、何処でも自由に飛んでいきたい。彼処に閉じ込められたままの"私"を…解放してあげたいんです」



「は、何それ…。全然質問の答えになってないし、意味わかんないんだけど」



笹乞さんは苛立つように眉を顰める。



「飛べるわけないじゃん、あんた人間でしょ。人が空でも飛ぶところ見たことあるの?」



「いえ…」



「あるわけないよね、鳥じゃあるまいし。羽根なんかないよ、あんたは人間なんだからさ」



「……………」



私達の会話に気付いたみんなが、読んでいた本から目を離して、ちらりとこちらを見た。



「それとも何?あんたまさか、本気で鳥みたいに羽根が生えて、自由に空を飛べるとでも思ってるわけ?」



「私はそう信じてます」



「馬鹿馬鹿しい」



「!」



「なら、今すぐ飛んで見せてよ。あんたは羽根があるんでしょ。だったら今ここで、証明してみせてよ」



「それは……」



一瞬頭を過ぎったのは、ボロボロに折れた私の羽根だった。



「出来るわけないよねぇ。まぁ、あんたに本物の羽根がついてりゃ飛べるかもしんないけどさ」



「……………」



「精々頑張りなよ。その努力が無駄だって、すぐに気付くからさ」



小馬鹿にするように鼻で笑い飛ばした笹乞さんの態度に、眉を顰めた尾崎さんが、手にしていた本を閉じて棚に戻すと、こちらに向かって歩いて来る。



「(無駄な努力か…)」



空色の瞳が悲しげに揺れた。



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