第7章 波乱
教室に戻ると、他の子と話していた真雪が私に気づいて声をかけた。
「あ、瑠衣おかえ…どうしたの?」
「別に!ちょっと久しぶりにムカついただけっ!」
「はあ?」
なんか思い出したらまたムカついてきた…!
私、自分が思ってるより赤司くんのこと気に入らないのかな。
なんか気持ち悪いし、頭痛いし…。
ハッ!脳が無意識のうちに奴を排除しようとしてるのか!
「どうでもいいけど、次理科だから移動だよ」
「私今なら毒薬作れるわ…」
「あんた重症だ。今日はさっさと家帰んな」
「う~…」
「あれ…ここどこ…」
気づいたら、私は知らないところに立っていた。
何ここ真っ暗…誰もいないし、音もない…。
「誰かいないの…?」
私の呟きが空間にこだまする。
次第に怖いという感情が私を支配し始めた。
「誰か…!誰か来て!返事してよ!?」
誰かきて…誰か…!
私は一番に思い浮かんだ人の名を叫んだ。
「大輝!!」
『…なんだよ』
「え…」
「…自分で呼んどいて、え…はねえだろ」
顔を上げると、呆れ顔の大輝が目の前の席に座っていた。
「大輝…え、夢…?」
「は?ああ、なんかお前すげえ苦しそうだったぜ。悪夢見るとかガキかよ」
ケラケラ笑ってからかってくる大輝のおかげで、現実なんだという実感がやっと湧いてきた。
大輝の顔を見ていたら何だか安心してしまって、不意に目から涙が零れた。
「…おい何で泣くんだよ、そんなに怖かったのか?」
「………」
「お、おい瑠衣、からかって悪かったよ。泣き止めって」
大輝が私の顔に手を伸ばし、優しく涙を拭う。
大輝の焦ったような顔を見て、思わず少し笑ってしまった。
「ふふっ…」
「…なに笑ってんだよ」
「何でもないよ…」