第7章 波乱
~赤司side~
行ってしまったか…まあいい。また捕まえればいい話だ。
「…おい赤司」
「真太郎か。どうした?」
「どうした、じゃないのだよ。何故あいつを勧誘している」
「僕が気に入ったからさ。いけないかい?」
僕が微笑み問いかけると、真太郎は眉間にしわを寄せた。
「あいつはバスケに関してまるで知らないのだよ。そんな奴を入部させたって使えないだろう」
「…随分否定するんだね。そんなに彼女が嫌か?」
真太郎の目をじっと見つめる。「そんなことは言っていないのだよ」と、真太郎は目線を逸らした。
「僕は彼女を気に入ったよ。僕に反抗する人間を久しぶりに見た。力づくでも従わせたくなる」
「お前の願望を叶えるためだけにあいつを入部させようとしてるとしたら、俺は反対だ」
「違うさ、彼女を入部させることで生じるメリットはちゃんとある」
僕は椅子から立ち上がり壁に掛かっている時計を見た。
いけない、そろそろ午後の授業が始まってしまう。
「ほら真太郎、もう行こう。そろそろ鐘が鳴るぞ」
「…赤司、俺はあいつの入部にそれほど強くは反対しない。
だが、
青峰のことも考えてやれ」
真太郎は真剣な顔でそう言い、踵を返した。
「先に行く」
「…ああ」
…驚いた。真太郎が他人の、ましてや大輝のことを考えろと僕に言ってくるなんて。
だが、真太郎の言うことにも一理ある。
バスケが楽しくない今の大輝は、バスケを忘れられる場所が必要だ。
だから、バスケと無縁な久瀬といる時間は大切なものだろう。
しかし…
「…やはり、僕が優先すべきはバスケ部の勝利だ」
この世は勝利が全てなのだから