第17章 【番外編】マツノトクエスト 第十六章
「……ぐすっ、ぐすっ……チーン!……うぅ、ナス子」
「おぁっ! なななな、なに?! 私悪女じゃないからっ」
「キス……してくれ」
「へ?」
何でこのタイミングでそう言われたのか意味がわからないが願ってもないチャンスではある。
ほら、横のトド松も呆れた顔はしてるけど顔をクイクイカラ松に向かってやってるし、早くしろって急かしてるよこれ。
「ブレイクハートを癒すには伝説の乙女のキスで癒される他ないだろう……そ、それにもし、本当に呪いが解けるのであれば、多少なりともこの辛く重い気持ちも軽くなるかもしれない……だから」
君が恋したのは多分呪いは関係ないけどね。
ただのボインで可愛い女の子に勝手に惚れこんじゃっただけだから、童貞だし。
「じゃあ、お言葉に甘えまして」
「ああ、頼む」
「はぁ、ぼくあっち向いてるね。さすがに兄と姉の近親相姦のようなキスなんて目撃したくもないしなんなら母さんと父さんがキスしてるのを見せつけられてるようなモノだから耐え難いわぁ」
このクソ野郎め、私は乙女だぞ? いや、自分で言うのも恥ずかしいけども。
でも母さん言うな母さんって。
まぁ、キスしている場面などは見られたくないからちょうどいい。
ベットに肩を落としたまま、コチラを見つめていたカラ松に近づき目を瞑るよう促す。
「じゃあ、行くよカラ松」
「………お、お願いシャス」
「おい! 急に緊張モードに入るのやめてぇ?! お姉ちゃんも緊張うつるから!」
「えぇ、だだだだって、あれだ……俺もキスは初めてで」
「いーい?! これはキスじゃない、キスじゃない!! 口と口をただくっつけるだけの呪いを解除するだけの行為なの、わかった?!」
「しかしさっきはキスって……あ、ちょっ、待っ……!」
早くその口を塞いでしまおうと照れから来る気持ちをはぐらかすようにカラ松の胸倉を掴み自分の口に押し当てる。