• テキストサイズ

【黒執事】スノードロップ【死神・裏】

第8章 赤と黒


1888年11月9日。
降りしきる雨の中、私達は今日これから起こる殺人事件の現場付近にいた。
少し高めの建物の屋根に乗り、全体を見下ろす。
すると壁沿いに、一人の少年と黒い服を着た成人男性の姿が見えた。

「ロナルド、あの二人は?」
「あぁ。よくわからないけど、関わると良いことないよ」

わからないとは言いつつも、ロナルドは何か知っている様子だった。

「今日これから、人が死ぬんだよね」
「そうだよ」
「……救うことは、出来ないんだよね」
「うん、出来ないね。リストに載っている以上、それは覆せない」
「そう……だよね」

人が襲われることを知っていながら、それを止めることが出来ない。
もどかしかった。

「今なら、まだ引き返せるよ」
「……ううん。そういう意味じゃないから、大丈夫」

私は静かに見守ることにした。



腕時計に目を向けていたロナルドが、前を見て言った。

「来る」

その直後、女の叫び声が聞こえてきた。
死亡予定者リストに載っていた、メアリ・ケリーの声だろう。
それまでずっと近くに身を潜めていた少年が、叫び声のした建物の扉を勢いよく開けた。
その中から現れたのは、執事の姿をしたグレル・サトクリフだった。

「マダム・レッドもあの中に?」
「多分ね」

やはりこの事件の犯人も、彼らだった。
少しして、マダムが姿を現した。
赤い死神の姿に戻ったグレルが、少年に向かってデスサイズを振り下ろす。
すると、少年と一緒にいた男が、それを手で止めた。

「何、あの人」
「人じゃないよ」

気付けば、グレルと黒服の男が戦闘を繰り広げていた。
その光景を見て、頭に電撃が走るような感覚がした。

「悪魔……」
「クロエ?」
「悪魔が……いる……」

一瞬目の前の景色が歪み、よろけてしまった。それをロナルドに支えられる。

「クロエ、悪魔の存在を知ってたのか」
「知らない。でも、何回も見た……夢の中で」

赤い死神と黒い悪魔。
その二つが襲いかかって来る夢。
ワークハウスにいた頃に、何度も何度も見た夢だ。
直感的にわかった。あの黒い燕尾服の男。あれは悪魔だと。
/ 80ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp