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【黒執事】スノードロップ【死神・裏】

第6章 真実への扉


「今まで頑張ってきたクロエにとって、この接触はこの上なく辛いものになると思う。だから、俺が出来る限りの情報を集めて来るよ」
「……私も」
「ん?」
「私も、行くよ」

冷たい風が吹いた。

「これは、私の調査だから。あの悲惨な事件を止めたくて、願って願って、やっと手に入れたチャンスなんだから」
「今の家族に会ったところで、その事件を止められるとは限らない。その場合、もっと辛い思いをするかもしれないよ。……酷な事を言うようだけどさ」
「大丈夫。今までの人生以上に、辛いものはきっと無いと思うから」
「本当に、大丈夫?」
「大丈夫」
「本当に?」

私は少し間をあけて、深く頷いた。
ロナルドは、わかったとだけ言って、それ以上は聞かないでいてくれた。

リストにあった老婆の住む家が見える所まで来ていた。
強盗殺人が起きたという時刻から30分が過ぎようとしていた。
そのとき、家の中から中年の男がふらふらと出てきた。
男は覚束無い足取りで、少し道を進むと、巡回中のヤードを見付け、駆け寄った。
どうやら、殺害された老婆が男によって発見されたようだ。
見たところ、男は老婆の息子といった感じか。
実の親の死を目の前にすることの辛さは、よく知っている。

「さて、ここからヤードが集まってきて捜査になるか、もう少し見送りになるか。ここ最近のヤードは、地区によって仕事の出来にかなり差があるんだよね」

ロナルドは手帳を確認する。

「審査と回収は終わってるな。犯人は……っと……さすがにこれは漏らしたらまずいか」

手帳を閉じ、私の方を見る。その目は、いつもと変わらない黄緑色に輝いていた。

「これからクロエの家族がいる家に向かうけど、心の準備は?」
「大丈夫。出来てる」
「よし。クロエは、俺の助手みたいな感じでついてくれば良いよ。無理に発言もしなくてOK。これでメモを取ってるフリでもしててね」

そう言ってロナルドは私に、何も書かれていない小さな手帳とペンを渡してきた。
私達は、あの家に向かって歩き出した。
緊張で、心臓が飛び出そうな気がしていた。
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