Little lieR【イケヴァン◆ifイベ原作】
第2章 君の声
与えられた部屋で、アーサーが原稿へとペンを走らせていると。
冬の風の隙間を縫うように、優しい声が耳をかすめた。
「ふふ………、いい子ね」
歌うような、年頃の娘らしい軽やかさを纏った声。
窓の外へと視線をさ迷わせると、そこには猫を前にしたレフィリアが。
その猫を撫でる彼女の表情は………自分や他の男達に見せていたものとはまるで違う。
優しさが零れるような………心から微笑っている表情だった。
「コーヒーをお持ちしました………、アーサー?」
入ってきた彼女の側近は、視線の先にレフィリアがいることを見止めて。
「………すごく綺麗に微笑うんだねーレフィリアって」
「レフィリア様はそういった御方ですから」
思わず彼を見つめると、切なげに瞳を揺らして。
「いつだって『大丈夫』だと、微笑っている方です。
その御心は………枯れ果てていると云うのに」
「どういうイミ?」
片眉をつり上げ問うけれど、彼はこう言うだけで。
「………それはレフィリア様御自身からお聞きになってください」
マグカップを押しつけるように渡すと、部屋を出ていった。