第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 てか及川って家に居るのか? 」
「 徹くんなら自分の部屋に居るはずだよ 」
「 この前漫画貸したんだけどよ
あいつさ俺に返さず借りパクしてやがる
今部屋に居るならちょい乗り込んでくるわ 」
「 行ってらっしゃい 」
彼は階段を素早く駆け上がり姿を消した
岩泉くんなら何となく想像がつくものだが
及川さんって漫画とか読むんだ、意外だなあ
好きな食べ物も牛乳パンだし庶民的なんだ …
「 じゃあ次は家の中を案内するね 」
陽葵ちゃんに連れられ家の中を歩いて行く
トイレとバスルームは東西各2ヶ所ずつある
それぞれ毎日掃除をしなければならないそう
次に連れて来られたのはワインクーラー
どうやらここの住人はお酒好きばかりらしい
特に中でもワインが好きな人が多いらしい
ワインは及川さんが調達してくるのだそうだ
後は3部屋ほどある客室も案内された
彼らの友人が遊びに来た時に使用するそう
客室もホテルのような仕様でとても驚いた
「 最後はお庭だねっ!
春はみんなで揃ってお庭でお花見して
夏になるとバーベキューするのが恒例!」
「 へえ、なんだか楽しそうですね! 」
庭も見事なまでに綺麗に手入れされてあった
手入れをするのは週に1回なんだとか
てっきりプロを雇っていると思っていたが
これもメイドがやっているのかと感心した
一通り仕事内容を教えて貰ったところで
陽葵ちゃんが少し休憩しようかと提案した
彼女は自室に行くと言い私は1人残された
部屋に帰ろうかと思ったが落ち着かないので
リビングのソファーに座り休憩する事にした
プロフィールブックでも見て待っていよう
そう思いながら私は再びノートを開いた