第1章 憂鬱王子はキスをくれない.

１時間後 言われた通り部屋にやってきた
部屋に通しおチビをソファーに座らせた

「 これ食え 」

俺が静かにおチビの前に差し出したのは
お皿に乗っている大量の葡萄の山だった
突然の出来事におチビは困惑している様だ

「 しかし、えらい変わり様だなァ 」

俺はニヤニヤしながらおチビの事を見つめる
こうして近くで見るとますます杏奈に似てる
まるで失われていた時間が戻ってきたみたい
おチビは俺が何か企んでるとでも思ったのか
不快そうな顔をしたまま不機嫌そうに言った

「 これは謝罪のつもりですか？ 」

「 謝罪っつうかご褒美ってとこだな 」

「 私との約束覚えてますか？ 」

俺が与えた葡萄を頬張りながら睨みつけてる
もしおチビが痩せたら暴言の数々を謝罪する
恐らくこの約束の事でも言ってるのだろう。

「 覚えてるよ 」

「 え … 覚えてたんだ、意外 … 」

「 でもよくよく考えてみろよ
俺の暴言の数々でお前はこんなに痩せたし
前に比べれば少しは女らしくなったわけ
お前に感謝されてもいいくらいなんだけど 」

この人は一体何を言っているのだろうか
そう言いたげな顔をして呆れているみたいだ
自分の言い分は間違っていると思えなかった
むしろ正論を言っていると思っていたくらい

「 自信満々に言いますか … 」

「 いや、そうだろ？
俺が願い事聞いてもらってもいいくらいだ
なのに葡萄まで用意してやったんだから
お前はうだうだ文句言ってんじゃねえよ 」

おチビがしかめっ面で黙り込んでしまった
納得がいかないって言いたそうにしていた
俺は頬を両手でぐいっと摘んで彼女を見る