第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 じゃあさ …
もし俺が美雨ちゃんと付き合ったら
100%嫌じゃないって言えるんだ? 」
「 お前はメイドに手は出しても
のちのち面倒だから付き合ったりはしねえ 」
「 そんなの分かんないじゃん!
恋なんていつどう生れるか分からないし 」
及川はドヤ顔しながら俺に向かって言い放つ
言っている事はなんとなく理解は出来るが
どうも及川が言うと胡散臭さが満載である
「 杏奈ちゃん、元気にしてるかな 」
杏奈とは別れてから連絡は取っていなかった
ここのみんなともそれなりに仲が良かったし
一緒によく飯を食ったりもしてたんだっけ
及川とも仲良くしてたから懐かしいのだろう
「 さあな …
新しい男でも出来たんじゃねえの? 」
「 杏奈ちゃん、可愛いもんね
クロりんもそろそろ恋愛したらどう? 」
「 大きなお世話なんですゥ 」
新しい恋愛をする気になんてなれなかった
杏奈との事があってから物事を悪い方にしか
考えることしかできなくなってしまっていた
俺はどうせそうゆう人間なんだと開き直って
自分だけが傷つかないように今過ごしている
「 引きずるくらい好きだったんなら
どうしてわざわざ杏奈ちゃんと別れたのさ 」
及川は唇を尖らせながら俺に向かって言った
別れた理由をみんなには詳しく話さなかった
と言うかなんとなく話したくなかったんだ
俺が責められるってのは分かっていたから
日頃の行いが悪いときっとこうなるんだな
「 それは秘密だな
大人の男女には色々事情があるんだよ 」
「 そんなに話したくないの?
俺には話してくれたって良いのに! 」
「 これから先も話す事はねえな
くだらねえ事言ってないでさっさと寝ろ 」
「 え─!もっと話そうよ─! 」
駄々をこねる及川を見て苦笑いを浮かべる
なぜ俺がこいつと語らないといけないんだ
「 また今度にでもしようぜ
今日は疲れたし明日も朝早いからな 」
「 クロりんのケチ─! 」
「 ケチじゃねえしクロりんって呼ぶな 」
1人で騒いでいる及川をリビングに残して
俺は水を片手に自分の部屋へと戻っていく
久しぶりに聞いた杏奈とゆう名前に胸が痛む
出来れば彼女をまだ思い出したくなかった
── その日、俺は眠れない夜を過ごした