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闇夜の雫【FF15】

第3章 後編



広場が静まり返った。——一拍の沈黙。そして爆発的な歓声とどよめき。
王女はバルコニーで膝を震わせながらも、前方の赤髪の男から目を離さないでいた。

アーデンは何事もなかったように手を下ろし周囲に軽く視線を巡らせると、己の行動がやや浅はかだったかと後悔した。
そこまで目立つ攻撃をしたわけではないので、注目を集めるとは思わなかったが、そもそも王女のせいで注目されていたため、アーデンの所業だと気づかれるまで時間はかからなかった。

周囲からの好奇な視線を感じながら、もうどうでもいいかと開き直ると、腕の中にいるユーリへと視線を戻した。

「いやぁ、びっくりしたね。——大丈夫?怪我ない?」

まるで散歩中に犬に吠えられた程度の温度感だった。
あれだけの数の魔物を瞬殺できるあたり、彼の強さを再確認せざるを得なかった。
そして何気にルシスの血を引いてるから、魔法もその気になれば使えるということも。

広場では王城の兵士たちが中庭に落下した魔獣を取り囲み、群衆は興奮冷めやらぬ様子で口々に今の出来事を語り合っている。「あの赤毛の男は誰だ」「王女を救った英雄だ」——そんな声が飛び交う。

「…正直、あなたには勝てる気がしないですね」
「えぇ?もっと他に言うことあるでしょ」
かっこいい、素敵とかさ。
ユーリの呟きにアーデンは肩を落とす。
なんとも似たようなやりとりを以前にもした気がするが、生憎ユーリはアーデンに対して素直に賛辞の言葉を投げかける性分でもない。
ユーリはアーデンの拘束を解き何事もなかったように席に戻ると、アーデンもまたそれに続いた。

そしてバルコニーでは、王女がまだ先ほどの場所から動けずにいた。侍女に支えられながらも、その瞳は一点——広場の中の赤い髪を追い続けていた。
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