第3章 後編
王女からの視線に疑問符を浮かべながら、アーデンは酒を煽った。
この国には外交で何度か来たことがあり、当然王女とも面識はあった。
だが、例えアーデンの正体に気づいたとしても、この大衆の面前であからさまな視線を受ける理由が分からなかった。
アーデンはこの空気をどうしたものかと思い考えを巡らせていると、突如不気味な鳴き声が響き渡った。
「魔物だ!!」
誰かの叫びと共に周囲から悲鳴が上がった。
空を切り裂くような咆哮とともに、翼を持つ魔獣がバルコニー目掛けて急降下してきたのだ。鉤爪が白く光り、警備兵が慌てて槍を構えるが間に合わない。
この国は確かに栄えてるが、幼い彼女が治めているくらいなので予算は帝国以下であり、防衛システムも軽微なものしかないのだろう。
城周辺に張られた結果は程なくして破られ、多くの魔物が空から降り注いでくる。
アーデンは臨戦体制をとなった頼もしい恋人を片手で捕まえると、自分のそばに引き寄せてため息を吐いた。
これではせっかくのバカンスが台無しである。
アーデンはユーリが離れないように抑え込むと、空いている手で魔法陣を描き詠唱した。
すると赤い髪が風で靡き、上空に現れた魔物は目に見えぬ速さで、光に貫かれていく。
全ては一瞬の出来事で、絶命した魔物は悲鳴すら上げることなく地に落ちていく。
その中でも王女を狙っていた大きな飛龍がぐらりと軌道を逸らされ、巨体がバルコニーの石壁をかすめて城の中庭へと墜落していった。