第3章 後編
石畳の坂道を登った先にその宿はあった。白い壁に青い窓枠、テラスから海が一望できるお洒落な作りをしており、アーデンが扉を開けると、カウンターの老婆が顔を上げ、にこやかに声をかけてきた。
「あら、久しぶりじゃないの。今日はかわいいお嬢さんを連れて、観光かい?」
一応サングラスをしていたが、何度か訪れたことのあるこの宿主はアーデンの正体にすぐ気づいた。
しかし深く詮索せずに、空き部屋を案内している当たり、この手の客には慣れているのだろう。
流石、アーデンが気に入っているだけのことはある。
「夕食はどうするかい?暫くは誕生祭があるから外でも困ることはないと思うけど」
手際よく宿泊の手続きを進め、アーデンに鍵を渡しながら幾つかお勧めのレストランを案内していた。
希望すればここでも食事はできるようだが、折角なので外で食べることにしたのだ。
アーデンは礼を言うと、ユーリの手を取り部屋に向かった。
ユーリは引っ張られながら慌てて老婆に会釈すると、老婆は笑顔と共に手を振って答えてくれた。
部屋は最上階の海側を用意してくれたようで、部屋を開けた瞬間、視界に映った青い景色と綺麗な部屋に、ユーリは珍しくテンションが上がっていた。
目覚めてから兵士として泥臭く生きてきた彼女にとっては、縁のなかった環境だから、新鮮なのだろう。