第2章 遊戯王GX 消えゆく姿/丸藤亮 (非恋)
「──わた、し…が…?」
変わり果てたドラゴン達を見上げる。
彼らも本位でない戦いと戦術に苦しんでいた。
「ごめ…な、さぃ…」
《何を謝っているだ。君は、素晴らしい愛し方をしているんだよ。君の愛は本物だ!だから、僕は手伝ってあげたんだよ?さぁ、待ちわびただろう?君の願いを叶える瞬間だ。》
ユベルはヨハンの姿のままウットリと私の輪郭をなぞる。
そして囁くのだ。
目の前にいる亮を“仕留めろ”と。
彼は片膝を地に着け、崩れ落ちそうになる上半身を、膝に手を突いて耐えている。
あんなにボロボロになるまで…
何も感じずに、彼を痛めつけていた。
…何て恐ろしい独占欲。
…何て醜い想い。
ポロポロと涙が頬を伝う。
「ごめん、亮。私、は…貴方が好きだから…消えてしまう未来を変えたかったの。だけど…私が貴方を消すなんて…できない!」
私はヨハンを振り払い、デッキに手を伏せた。
『私はサレンダーする!』
《…ッ、そぅ、君はそっちの未来を選ぶんだね?ならこっちも手段を選ばない。》
バトルフィールドに居たドラゴンが光の粒となって消えていく中、ヨハンはパチンと指を鳴らすと真っ黒な闇が私の両腕、両足を縛り上げ、宙に磔けた。
「壱伽!」
「亮…お願、い…逃げて…!!」
《全く、幻滅したよ。君の愛には好感を持てたのに…所詮はそんな程度。面白みが無いね。》
「お前には彼女の想いなど解るまい!!壱伽、俺は知っていた。好きだ。一目見た時から…ずっと…、」
「亮…ッ!」
《ハハハ、この場でシェイクスピアの物語でもやるつもりかい?…反吐がでそうだよ。気持ちが伝わったところで、未来は変わりはしない!》
「確かに…俺はこの世界で死ぬだろうな…この命もあと僅かだと、自分だからこそ解る…ならば、ここで燃え尽き、愛する者を救うのも悪く無いだろ。」
「何を…!!駄目!駄目よ!!絶対駄目!!私なんか掘っておいて!命を無駄にしないで!お願いよ…お願いだから、逃げて亮!」
《煩い女だ。口を塞げ。》
「ゃ、…ッ!」
───…亮!!
闇が蔓のように変わり、私の全身を覆い尽くし、視界を奪う。
「壱伽…お前は俺が必ず助ける。」
彼の声を最後に、再び私は暗闇の中へと引きずり込まれた。