第2章 遊戯王GX 消えゆく姿/丸藤亮 (非恋)
目が覚めると、翔がボロボロの顔で私を抱きしめていた。
『…しょ、ぅ?』
状況を今一掴めない私は、彼の涙を拭ってやる。
「壱伽さん…お兄さん…が…」
苦しげに言葉を繋げる翔の姿を見て私は悟る。
もう、この世界に彼が居ないことを…
『未来を変える事は…出来なかったのね。』
翔は彼の"最後"を教えてくれた。
自分の命を極限まで削って…
必死に助けてくれたのだ、と。
翔は兄から預かったと言って私にデッキを差し出す。
受け取り、一番上のカードを捲る。
そこに映し出された美しい鋼のドラゴンは…
『サイバーエンドドラゴン。』
亮のエースカードだった。
『亮の魂とも言えるデッキ…』
嬉しくて、悲しい…
私はデッキを握り締め、胸に抱く。
すると、カード達が想いに応えるかのように淡く光り輝いた。
不思議…まるで…
「"いつも傍で見守っている"…」
『ぇ?』
「お兄さんからの伝言です。そぅ…貴方に伝えろと…」
『──…ッ!』
貴男はどこも変わっていなかった。
だって…
このカード達がそう言ってる。
凛としていて…
強く、優しい。
居なくなってしまっても…
貴男の心がこのカードに残ってる。
私を守ろうとしてくれている。
『…生き抜いてみせる。』
「壱伽さん…?」
『こんな場所に負けたりしない…』
亮が命を懸けて私を助けてくれたんだもの…
簡単に死んでは駄目だ。
『そして…いつか…彼のサイバーエンドドラゴンを使いこなしてみせる。』
高みを目指した貴男のように、私も強くなってみせるから。
だから…
今だけは…
空を見上げ、亡き貴方を想い、子供みたいに声を上げて涙を流した。
End
後書き→