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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第10章 別れの曲


「俺ね、松岡さんの言うこと、今でも100%は信じられないんだ。
確かにね、言ってることはわかる。
俺の事を思って、両親は厳しく育ててくれてたのかも知れない。
でも、それでもわからないんだ、母さんが俺を愛してくれてたこと。
母さんは弟には優しかったから…
あれが親から与えられる愛情なんだと思ってた。
それが俺には一切なくて、厳しさだけが愛情だって言われても、すぐには納得出来ない…」

「うん…」

翔が思ってることを、全部吐き出させてやりたい。
きっと今まで誰にも語らず、ひとりで抱え込んできた思い。
何年にも渡り、辛い思いをしてきたのに
急にそれが愛情の裏返しと言われても『はいそうですか』と受け入れられないのは、当然のこと。

「でもね、俺、感謝した…」

ちょっと意外な言葉…
でもまぁ、育てて貰ったんだから感謝はするか。

「俺の思い違いだったのかもしれないけど
あの時、家を飛び出してて良かったって…」

育てて貰った感謝じゃなく、家を飛び出せた事への感謝?
飛び出した事は後悔してないのか?

「じゃなきゃ俺、潤に拾われなかった…
潤に拾って貰えてなければ…智とも出逢えなかった…」

翔の瞳に涙が浮かぶ…

「俺、ずっと考えてたよ?
もし、あの時家出しなければ、死ぬまで智と会えてなかったんじゃないかって…
そう考えたら、怖かった…
智と出逢わずに終わってしまう人生があったのかも知れないって思うだけで、凄く怖かった…」
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