第10章 別れの曲
メシを食い終わると、翔は俺の隣に座り、肩にもたれ掛かってきた。
何かを話す訳でもない、ただぼーっとそうしているだけ…
俺はそんな翔に、なんて言葉を掛けて良いのかわからず、肩を抱いてやることしか出来なかった。
「翔…今日は俺ひとりで片付けするから、先に風呂入っちゃいな?」
「やだっ、智と入る…」
今日は先に休ませてやろうと思ってそう言ったのに、翔は俺の肩に顎を乗せ、子供がねだるように言った。
「そっか…」
翔が望むならそれでいいんだけど…
洗い物をしてるときも背中に貼り付いてるし
風呂に入れば全て俺にお任せだし…
可愛いんだけど、やはり何も話さないことが心配になる。
ベッドに入ってからも
予想はしていたが、俺の胸に潜り込むように寄り添って来るし…
「智…唄、歌って?」
「ん?いいよ…」
髪を撫でながら歌ってやると、静かに目を閉じた翔。
歌い終わる頃には、いつもなら眠りに就いてるのに…
「…智」
翔は目を閉じたまま話し出した。
「どうした?眠れないのか?」
翔はゆっくりと目を開くと、俺のことを見つめた。
「俺、此処にいていいんだよね?」
「当たり前だろ?ここはお前の家なんだから」
「うん…俺ね、松岡さんの話し聞いてからずっと考えてた…」
「何を?」
「家を飛び出したこと…」
だよな…親とちゃんと話し合えてれば、家を飛び出すことも、潤さんに拾われることもなかったんだ。
そうすれば、潤さんに体を許すようなこともせずに済んだ…