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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第10章 別れの曲


「嫌だ!帰らないよっ!
俺は智の傍に居たい!」

「誰も俺から離れろとは言ってないだろ?
一度お袋さんに、元気な姿を見せてやれって言ってるだけだよ」

「でもっ」

「今すぐとは言わない…
少し落ち着いて考えてからでいいよ」

「翔、俺からも頼む…
ちょっとだけでいいんだ。
お前が元気にしてることさえわかれば、お袋さんも安心するから」

松岡さんが俺に向かって頭を下げた。

「少し…時間をください…」

「わかった…でもお前が無事にいることだけは、伝えていいか?」

いつ帰る気になるかわからないし
無事にいることくらいなら、教えておいてもいいかな。

「それくらいなら…」

「ありがとう…」

松岡さんがホッとした表情を見せた。

智の手がまた俺の頭を撫でる。
言葉にしなくても『良くできました』って言ってくれてるみたいだ。

「あ、時間っ」

ニノさんが慌てたように声をあげた。

「あ、ヤバい。営業準備しないと」

「すみませんでした。調律は終わってますんで」

「ありがとうございます。
翔、少し指慣らしておいて」

「それよりも開店準備が…」

「大丈夫、翔の分も智が頑張るから」

「お前はほんと人使いが荒いな…」

「可愛い翔の為でしょ?
それに翔の演奏は、智の為にしてるんだよ?
だったらその手伝いくらいしてあげなさいよ」

「へいへい…」

智が大きく息を吐いた。

「ごめんね、智…すぐに手伝うから」

「いいよ。その代わり今日も最高の演奏聴かせろよ?」

智が優しい笑顔を見せる。

「うん」
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