第24章 幸村の誕生日
そこに、間合い良く、佐助がやってきた。
「幸、馬の用意が出来てる」
それを合図に幸村が逃げる。
「そっ、れじゃ、行ってくるっ!」
拗ねたのと照れたのを隠そうと、早口に挨拶らしい事を言うと、信玄に背を向けた。
くすくす
「ああ、気を付けて行ってこいよー」
信玄は母か父の様な優しい眼差しで幸村の背中を見送った。
気持ちが急いて、思ったより馬を速く進めていたらしい。
安土の市をひと回りして、幸村は腕に籠を抱えていた。
ソレには熟した大梅と杏が、どっちがどっちか区別出来ない具合に入っている。
(一緒に喰おう)
と考えて買った。