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君の涙【ヒロアカ】

第5章 夢を追う覚悟



 『っ、!ありがとう、ございますっ!!』

 大きな声でお礼を言うと、病院だから静かにね、とお母さんに怒られてしまった。

 「さん、検査ですよ」

 車椅子を引いた看護師さんが部屋に入ってくる。お母さんと話せるのもここまで。車椅子なんて大げさねぇと笑うお母さんに最後に一つだけ。

 『あ、あのっ……いろいろあったけど、私は今元気にしてます!優しい人に出会えて、楽しく過ごしてます!』

 看護師さんに車椅子を押され、病室を出ていくお母さん。その姿が廊下に消える前に言い切ると、お母さんは優しく微笑んでくれた。


 病院の自動ドアを通り抜ける。階段を降りて病院の敷地を出たところで、特徴的な赤と白が見えた。

 『……轟くん』
 「っ、…か」

 私服姿の轟くん。彼も誰かのお見舞いに来たのだろうか。それとも検査の帰りだろうか。そのまま通り過ぎるのも居心地悪いのでその場に立ち止まる。すると、少し目を泳がせた轟くんが口を開いた。


 『えっと…ミルクティーください』
 「アイスコーヒー」
 「かしこまりました」

 今私は轟くんと一緒に、落ち着いた雰囲気の喫茶店にいる。話がしたいと言われ、場所を変えようと轟くんについてきてここへ来たのだ。お洒落な内装に、こだわりのあるテーブルやイス。その割にはお客さんが少なく、知る人ぞ知るような喫茶店。女子に人気がありそうな店だが、どうやって轟くんがこの店を知ったのかとても興味がある。

 『お洒落なところだね』
 「そうか?」
 『轟くんはこのお店よく来るの?』
 「今日初めて来た」

 なるほど適当に歩いて適当に入ったお店らしい。もっと、こう……俺の彼女の行きつけの店、とかそういう返答が来るのではないかと勝手に期待してしまった。

 「はこういう店好きなのか?」
 『うん!すごくいい雰囲気だね。また今度誰かと来たいな~』
 「……爆豪と、か?」
 『えっ?』
 「お待たせしました。ミルクティーとアイスコーヒーです」

 なんとも絶妙なタイミングで注文していたドリンクが運ばれてくる。店員さんが行くまでの間の微妙な沈黙が流れる。轟くんて冗談とか言うタイプなんだ。ストローでミルクをかき混ぜ、チラッと轟くんを見る。轟くんはまっすぐ私を見ていて、まるでさっきの問の答えを待っているように見えた。


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