第5章 夢を追う覚悟
「その沈黙はイエスってことか」
『ええっ、違うよ!轟くんて冗談言うんだ~ってびっくりしただけで…』
「冗談なんて言ってねえぞ」
『え』
「と爆豪って付き合ってるんじゃねえのか?」
『はい?』
それこそなんの冗談でしょうか。轟くんは私のことをからかっているだけなのだろうか。彼が何を考えているのかよくわからないけど、表情はものすごく真剣に見えて、ますますわからなくなる。
『かっちゃんはただの幼馴染だよ』
「ただの幼馴染、か」
『そうそう。轟くんが変な事言うからびっくりした~。あ、今のかっちゃんに言ったら轟くん殺されちゃうから、冗談でも言っちゃダメだよ』
ストローでミルクティーをかき混ぜる。カラカラと氷の気持ちいい音がする。1口ミルクティーを含むと喉が潤うのがすごくわかって、私は喉が乾いていたんだと今さら気が付いた。
「……悪かったな」
『ううん。私は別に大丈夫だけど、かっちゃんだったら謝るなんてものじゃ許され──』
「そのことじゃねえよ」
それ以外になにがあるのだろうか。轟くんとちゃんと話すのは初めてだし、何かされた覚えもないし。なぜ謝られているのか考えていると轟くんが口を開いた。
「戦闘訓練のことだ……個性把握テストん時見てたけど、って特に個性も使わねえし、その割には結果も良いわけじゃねえし…正直力がねえんだなって思った」
『………』
「だから戦闘訓練の時も、の協力はいらねぇなって思ってひとりで行動した。でも…実際はすげぇの持ってんだな。俺はのことをなめていた。見下してて悪かった」
轟くんの言っていることは紛れもない正論だ。そう思われて当然だし、自分でそう思っている。あえてそれは言わなかったけど、轟くんは思ったより怖い人じゃないようだ。
『轟くんて優しいね、ありがとう』
「は?別に優しくねえよ。それにお礼を言われることなんかしてねぇし」
そんなことない。今まで自分は非力だと思っていたのに、クラスの優等生からそう言ってもらえたんだ。自分の力を少し認めてもらえたような気がして、気持ちがとても楽になった。えへへと笑うと、変なやつと優しい声が聞こえた。