第13章 学生の本業
「ちげえよ!なんでそうなんだよ!!」
「お前の説明よくわかんねえよ」
「わかれ!!」
教科書を丸めてポコポコと切島くんの頭を叩く勝己。店員さんも苦笑いを浮かべている。一旦ノートから目を離し、切島くんのノートを見る。
『ここはこの方式を使って…これを当てはめるんだよ』
「ん?…あ!そういうことか!!サンキュ!」
『いいえ!』
「もう一個聞いていいか?」
『もちろ─』
「は自分の勉強してろ!俺が教える!!」
『べっ!!』
「おい…」
私のノートを私の顔にぶつける勝己。思いっきり鼻にあたったんですけど。鼻をさすりながら勝己を睨む。そんなに教えたいのか。仕方ない、勝己のよくわからないプライドを尊重してあげよう。汗をかいたグラスの中のメロンソーダを一口飲んで、再びペンをとった。
「便所」
一言そう言って席を立った勝己。ガミガミと怒る勝己から解放された切島くんは、はあとため息をついて伸びをした。
『お疲れ様』
「おう、もな!」
『勝己あんなんだけど大丈夫?』
「全然!無茶苦茶だけどあいつおもしれぇからな」
『そっか』
切島くんは勝己に対して同等に接してくれる優しい人だ。勝己は根はいい人なんだけど、なんというか不器用だから周りから誤解されやすい。でも切島くんはそんな勝己と一緒にいてくれている。
『ありがとう、切島くん』
「ん?なにがだ?」
『勝己のこと』
「別にお礼言われることじゃねえよ……それよりさ」
『ん?』
ニカッと笑ったあと、視線を落として切なそうな顔をした切島くん。一体どうしたんだろう。
「って…いや…その……」
いつもの切島くんらしくない、ごにょごにょと濁すような喋り方。頭をかいて目を泳がせている。
「えっと、ばくご…いや……し、私服!可愛いな!!」
『えっ!?』
「いや~制服もいいけどよ!私服だとまた違う雰囲気っつーか、すげー似合ってんな~って思って」
『………』
「って、俺は何を…」
多分切島くんはお世辞でそう言ってくれてるんだろうけど、それでも男の人に可愛いって初めて言われた。ストレートに言われ、思わず顔に熱が集まってくる。バチッと目が合った切島くんは、髪と同じ色に頬を染めている。