第2章 Promise
「ねー!綿世!轟とどーいうカンケーなの!?」
教えて教えてと私の肩を揺さぶる芦戸さん。あの綿騒動から約一週間、また昔のようにクラスにいるのが気まずくなるかと思われたけど、そんなことは無く寧ろ友達が増えた。
数人とは名前で呼び合うようにもなった。
煙たがられず馴染めたことがとても嬉しくて口元が緩みまくる日々だ。何せくだんの件で中学は不登校になり、雄英入学まで友達と会うこともなくカテキョの先生とばかり過ごしていたから。
「轟くんとはお家が近いから一緒に帰ってるだけで、深い関係ではないよ」
「だけど?実は?」
「付き合ってないです!」
詰め寄ってくる透明人間の葉隠さん。私の答えにがっかりした様子だったけど、そこから始まる恋…という名の妄想を語り始めてきゃあきゃあ湧き上がる。
あの、せめて当人達に聞こえないところでやってください…。轟くんを不快にさせてないだろうかと焦りながら振り返ると気にしていないどころか聞いていないようでぼーっと窓の外を見ていた。
「まりちゃん大変やね。でも、轟くんがお家近くてよかった!登下校大丈夫かなって心配してたんだ」
お茶子ちゃんが柔らかく笑うから私もつられて笑う。優しいね、と伝えるとお茶子ちゃんは謙遜して轟くんには負けると言った。
轟くんのあれは優しさなのだろうか。私には、彼は私ではないどこか遠くを見ているように感じていた。
「皆!席につけ!授業が始まるぞ!」
先日学級委員になった飯田くんの声で女子トークもお開きになり、私もまた慌てて席について教科書を出した。