第9章 光と影、そして闇
***
──さり気なくっての、難しすぎる…
先程頑張らずに瀬呂に負けておけば楽だったのだろうか。
これ以上勝つと次は決勝だし、そこまで目立つのは大変頂けない。
終綴はあくまで、「程々に」活躍できればよかったのである。
だからこそ、今日は個性の使用に自ら制限をかけているのだが────
轟と睨み合いの状況が続く。
どちらも、互いの隙を窺っているように見える。
──そうだ。こうしよう。
急に終綴の顔が明るくなり、轟に向かって駆け出した。
『急にここで依田が駆け出したァー!!?
何か仕掛けるつもりか!?どうする轟ィ!!』
ぐっと腰を低くする。
そして、足払いを仕掛けようとして、────
しかし轟はそれに気付く。
瞬時に後に下がり、そして終綴の伸ばした脚を氷結させた。
パリパリパリ…
終綴は動けなくなる。
「降参」
肩を竦めて終綴が言うと、それで試合は終了した。