第9章 光と影、そして闇
「せ、瀬呂くん、場外!
依田さん、2回戦進出!!!」
ワァァァと観客が湧いた。
瀬呂はポカンと呆気にとられているが、嬉しそうに笑う依田を見、納得したらしい。
「………流石だな」
諦めたように笑い、瀬呂は肩を竦めた。
かなり勢いよく投げられた筈だが、彼は全くの無傷。
主審のミッドナイトは不思議そうに首を傾げながらも、2人に退場を促した。
───怪我させても良かったか。
そんなミッドナイトの反応に、終綴は少し後悔したが、それを表に出すことはなかった。
───まあいいや、これで増強型の強個性ってイメージは植え付けられたでしょ。
終綴の個性はかなり強力なものだが、増強型ではない。
それなのに、なぜ世間にそのようなイメージを植え付ける必要があったのか。
なぜ、増強型1本で戦うと決めていたのか。
それを周囲が知るのは、もう少し先の話になる。