第9章 光と影、そして闇
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「…これ、あいつじゃないか?」
驚いたように、1人の青年が目を見開いた。
暗い部屋で1人、その青年はテレビをじっと観ていた。
映るのは、とある高校の体育祭。
全国放送でテレビには流れていて、毎年注目度も高い。
そして今年は敵からの襲撃を退けたクラスがあるからと、さらに注目度は上がっていた。
青年が視線を向けるは、たった1人の少女──────
地味で特徴のない少年と、1対1で戦っている。
注目度の高い、クラスの一員だ。
戦力差は明らかだった。
男の方も悪くはないが、少女には敵わない。
ひとしきり彼女を眺めた後、青年は不思議そうに首を傾げた。
「………なんで、こいつが雄英なんかにいるんだ?」
青年は、どうやらその少女の正体に気が付いたようだった。
青年は、少女のことを一方的に知っていた。
いや、この青年だけではない。
少女は、本人が思っているよりもずっと、有名だったのだ。
────そう、つまり。
この青年の他に、少女の正体に気付く者だっているのだ。
──こんな全国放送になんか映って、多分狙われるぞこいつ…
彼女は、自分の知る限り、ありとあらゆる恨みを買ってきたはずだ。
例外である自分は、寧ろ彼女を尊敬すらしているのだが、かといって彼女が狙われない理由にはならない。
──ま、狙われるとしたら「今」じゃなく「昔」が理由だろうが…
──ヒーロー志望、なあ。
やはり引っ掛かりを覚えるが、もうひとつ、青年は重大なことに気付いた。
「こいつのクラス、1年A組か」
敵連合とかいう集団と戦ったクラスではないか。
──なるほどなあ。
だから襲撃に失敗したのか、と青年は頷く。
どうやらその失敗の原因を、その少女によるものだと思っているらしい。
あながち間違いでもないのだが。
青年は静かに思考し、それからスマホを取り出した。
そして、とある番号を呼び出し──────…