第9章 光と影、そして闇
終綴がフィールドに入ると、ワァァ、と熱い興奮に包まれた。
それに呼応するかのように、やけに響くアナウンスが聞こえてくる。
『お待たせしました!!
続きましては〜…
綺麗なルックスからは想像もつかない超パワー!?ヒーロー科、依田終綴!!
対
優秀なのにナゼか地味!!同じくヒーロー科、瀬呂範太!!』
あまりにも正直な紹介に、ひでぇと瀬呂は零したが、ストレッチに余念はない。
ぐ、と節々を伸ばしている。
対して終綴は余裕なのか緊張と無縁なだけなのか、客席を必死に見回している。
『START!』
あくまで終綴から動く気はないようだ。
じっとしたまま、瀬呂の動きを窺っている。
「依田が強ぇのは知ってっけど…負けるつもりは、全然ねぇからな!」
そんな終綴の様子に、それなら遠慮しないぞと瀬呂は─────
話したことは殆どない、クラスメイト。
しかしそれでも、しっかりマークはされていたらしい。
やはり轟の勝利宣言が効いているのだろうか。
それとも、実力を鑑みてのことか。
どちらも一因ではあるのだが、終綴はそれに気づかなかった。
瀬呂は右腕を垂直に曲げ、その肘からテープを噴出する。
やはり彼の個性では、こちらを縛ってから場外にというのが作戦なのだろう。
単純すぎて、作戦と言えるかは定かでないが。
こちらに向かうテープのタイミングを見計らい、
終綴は強く地面を蹴った。