第9章 光と影、そして闇
『残り時間約1分!!
轟、フィールドをサシ仕様にし…
そして、あっちゅー間に1000万ポイント奪取、とか思ってたよ5分前までは!!』
───奪、取。
その僅かな一言に、終綴の眉がピクリと動く。
───それは………私のだよ、ヒーロー。
苛立ちつつも、常に轟の左側をキープするよう動く。
しかしこのとき、苛立っていたせいで集中が散漫になっていたことは、否定できないだろう。
飯田が何かを企てていることに、全く気付かなかったのだから。
飯田が叫ぶ。
「奪れよ轟くん!
トルクオーバー!!!」
───何だ!?
そう思ったときには遅かった。
気が付くと緑谷の頭からハチマキが無くなっていた。
「トルクと回転数を無理矢理上げ、爆発力を生んだのだ
反動でしばらくすると動けなくなるがな…」
『逆転!!
緑谷、急転直下の0ポイントーーー!!』
そんな実況を聞いて、弾かれるように緑谷は反撃を試みる。
「取り返そうデクくん!!
絶対!!!」
轟のハチマキに、緑谷が手を伸ばした瞬間。
───…………?
体感したことのある感覚が、終綴の五感を襲った。
───何だ、これ…
同じものを感じたのか、轟は使わないと宣言していた筈の左側が一瞬だけ「燃えた」。
轟の表情に、動揺が表れる。
『残り17秒!
こちらも怒りの奪還!!』
終綴も僅かに動揺していたが、違和感を覚えて待って、と叫ぶ。
「そのハチマキ、本当に1000万!?」
「やられた…!!」
やはり違ったらしい。
「急げ!」
悔しがる暇はない、と終綴は走り出す。
『そろそろ時間だカウントいくぜ
エヴィバディセイヘイ!』
10
9
8
7
爆豪が飛び込んでくる
5
4
緑谷が手を伸ばす
2
1
…………