第9章 光と影、そして闇
一瞬だけでも、防御できればこの場は凌げる。
緑谷とタイミングが被ったが、彼がそこまで考えていたのかどうかは判らないけれど。
案の定、爆豪は黒影により攻撃を遮られ、瀬呂の個性によって騎馬へと戻されていく。
『やはり狙われまくる1位と猛追をしかけるA組の面々共に実力者揃い!
現在の保持ポイントは………ッ』
電光掲示板に表示された得点に、周囲は唖然とした。
何故なら上位にランクインしている騎馬の多くがB組、加えて爆豪チームが0ポイントになっていたからだ。
「単純なんだよ、A組」
───こいつか。
爆豪たちの後ろを通りながら、ハチマキを盗っている、やけに冷静な金髪生徒が目に入った。
「その場限りの優位に執着したって仕方ないだろう?」
余裕綽々と考えを述べる彼に、合理的だと終綴は納得する。
───ま、それじゃあ甘いけどね。
「切島ぁ…予定変更だ、デクの前にこいつら全員殺そう…!!」
───おかげで、爆豪の気をそらすことはできたけど。
『さァ残り時間半分を切ったぞ!!』
目の前に立ちはだかる、冷たく燃える瞳を見つめた。
───これで、こいつに集中できる。
───守りながらの戦闘には慣れてないからね。
「そろそろ、奪るぞ」
『B組隆盛の中、果たして───
1000万ポイントは誰に頭を垂れるのか!!!』
「時間はもう半分!
足止めないでね!」
「飯田、前身
八百万はガードと伝導を準備…」
鋭い終綴の聴覚が、轟の低く冷たい声を拾った。
────…来る!
身構えた瞬間、上鳴による強力な電撃が放たれた。
動きの止まった騎馬は轟によって凍らせれ、動きを完封させられる。
『上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた…さすがというか
障害物競走で結構な数に避けられたのを省みてるな』
相澤の冷静な解説が耳に届く。
ち、と思わず舌打ちしたくなる。
───これが体育祭で良かったよ。
迫ってくる轟たちの足を止めようと黒影で牽制しようと手を伸ばすも、八百万の"創造"により防がれてしまう。
常闇の黒影は特性上電光と相性が悪いし、八百万によっても容易に防がれてしまう。
「でも…弱点が知られてないなら、牽制にはなる!
何としてでも、1000万ポイントは持ち続ける!」