第9章 光と影、そして闇
10メートルほど先に、轟と爆豪が脚を足を引っ張り合いながら走っているのが見えた。
まだ今からなら追いつくかもしれない位の距離。
轟は慎重に、爆豪は飛びながらのゴールを目指しているようだ。
目を凝らして、地面を観察する。
地雷が多く埋まっているようだが、所々盛り上がっている土があったり、色の違う場所があったり。
おそらく、それらの場所に地雷が埋まっているのだろう。
──よく見れば判別はつく。
地面を強く蹴れば跳ぶことはできるだろうし早くゴールできるかもしれないが、それでは着地が心もとない。
万が一地雷を踏んでしまったら、時間は大きくロスしてしまう。
だからこれも地道が1番なのだろうと、慎重な足運びで走り始めた。
暫くすると、後方で爆発音が聞こえてきた。
あまり大きくはないが、間近で聞くのは耳がやられそうだと終綴は思う。
どうやら、他の選手も追いついてきたらしい。
──急がなきゃ……
順位はなるべくキープしたいところだ。
「っ!?」
ペースを上げようとしたまさにその時、かなり後ろの方で大規模な爆発が起こった。
度々起こるものではない。
かなりの規模、離れていた終綴にさえ思わず耳を塞ぎたくなってしまったくらいである。
風も熱く、一瞬にしてその場は熱帯のような気温になった。
そんな音と熱風に驚き、振り向くと頭上を何かが飛んでいく直後だった。
先程の障害物の1つであった、ロボットの破片だろう。
──何だあれ………って、緑谷!?
そして、その破片の上に見慣れたモサモサ頭が乗っていることに気付く。
どうやら爆発を逆手に取って跳躍したらしい。
先程まで姿すら見えなかったというのに、この勢いは何なのだろう。
まだ個性を使う様子は見えないし、本当に不思議な奴だ。
抜かされた元トップ2人は、引っ張り合いを止めて1位の座を取り戻そうと走り出した。
予選であるはずなのに、まるで本戦であるかのような熱さだ。
──ここで抜かされるとは予想外だったなぁ…それも、緑谷に。
さすがだ、と評しながら終綴はやはり地道に走り続ける。
結局、終綴は4位でのゴールとなった。