第9章 光と影、そして闇
『雄英体育祭!!
ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る大バトル!!
どうせてめーらあれだろ、こいつらだろ!!?
敵の襲撃を受けたにも拘らず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!
ヒーロー科!!
1年!!
A組だろぉぉ!!?』
プレゼント・マイクの呼びかけに、待ってましたと言わんばかりの歓声があがった。
クラスメイトと共に入場した終綴はぐるりと辺りを見回し、頭を抱えたくなっていた。
──観客ってこんなに多いのか…!!
昔のものなら何度か動画サイトで見たことはあったが、やはり体感するのとでは全然違う。
自分は、大勢に見られ慣れていない。
テレビを通して見ている人もいるだろうと思うと、憂鬱でしかなかった。
頭が痛い。
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか…!
これもまた、ヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」
感心したような飯田の言葉には、終綴も納得するしかなかったのだが。
「選手宣誓!!」
鞭のようなものをしならせながら、そう高らかに言うのは18禁ヒーロー・ミッドナイト。
過激SMプレイの女王のようなコスチュームだが、果たしてこれは高校教師として適切なのだろうか。
後に「性欲の権化」と評されることになる某M田は、いい…と、嬉しそうに鼻の下を伸ばしていたのだが。
「選手代表!!
1-A 爆豪勝己!!」
その人選に生徒たちがどよめく中、爆豪本人は無表情で朝礼台に上がった。
「せんせー」
何を言うのだろうか。
周囲はごくりと唾を飲む。
「俺が1位になる」
そして吐かれたのは、最も彼らしい言葉だった。
「絶対やると思った!!」
クラスメイトの非難を皮切りに、ブーイングが巻き起こる。
しかし当の本人は気にした様子もなく、
「せめて跳ねのいい踏み台になってくれ」
と続けている。
更にA組にはヘイトが集まった気がするが、爆豪と同じクラスになった時点で結果はこうだったのだと、諦めることにした。
──てか、ある程度は実力出さないと却って目立つし。
──事務所の目にも、ついておきたいところだし……ね。