第9章 光と影、そして闇
「おぉ!?クラスツートップがぶつかり合い!!?」
なんて実況まがいのことを上鳴が始めるが、それより気になるのはクラス中の視線を集めているということだった。
皆、何と返すのだろうと固唾を飲んでことの成り行きを見守っている。
勿論爆豪も、こちらを忌々しげに睨みつけてきている。
元々好戦的な性格で、しかもプライドも目標も高い男なのだ。
このような争いにおいて視界に入っていないということが気に食わないのだろう。
もっとも、終綴については態度が苛つくだけなのかもしれないのだが。
自分ではなく緑谷を見ているという点についてもムカつくのだろう。
彼の瞳は、緑谷をきつく捉えていた。
当然のように、終綴のことも睨んでいるのだが。
──あー、終わったな、コレ。
元から、A組であるというだけでヘイトを集めており、狙われやすいのだ。
メディアも注目するはA組がメインだろうし、そのクラスの中でも自分が狙われているとなると、カメラがこぞってこちらを向くのは想像に難くない。
──目立っちゃ駄目なんだけどなー。
さて困った、と苦笑していると、緑谷が漸く口を開いた。
「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか…は、判んないし、依田さんがそんなに謙遜する理由も、判んないけど…
そりゃ君の方が実力は上だし、依田さんも僕よりずっと上だと思う」
でも!と緑谷は顔を上げて、轟と終綴を交互に見た。
なぜか終綴も闘志を燃やしていると思われていそうな発言だが、わざわざ水は差すまい。
「みんな…他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ!
僕だって…遅れをとるわけにはいかない。
僕も本気で………獲りに行く」
「………おお」
受けて立つ、とばかりに轟が緑谷を強く見据えた。
お前も本気で来いとばかりに、終綴をも見つめる。
そんな視線を受け、終綴は肩を竦めた。
クラス中からの熱い視線を受け流す。
──熱いねぇ。
──ま、私は程々に…目立たないように目立って、そこそこの結果残せればいいかな。
本人にしか判らない目標を掲げ、終綴は再び、へらっと笑った。