第5章 目を光らせて
「いざ委員長やるとなると、務まるか不安だよ………」
昼休み。
嬉しさよりも不安が勝るようで、緑谷はいつにも増して下がり眉である。
「大丈夫、緑谷凄いもん!!!」
「ツトマル」
「大丈夫さ」
終綴、麗日、飯田の励ましに、そうかなぁとやはり緑谷は不安げだ。
まん丸の目が泳いでいる。
「でも、飯田くんも委員長やりたかったんじゃないの?」
麗日の疑問に、しかし飯田は納得したように答えた。
悔しそうではあるが、結果に不満はないようだ。
「やりたい、のと相応しいかは別の話…僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだよ」
「「ぼく……!!」」
「ちょっと思ってたけど飯田くんて、坊ちゃん!?」
麗日と緑谷が目を輝かせた。
その瞳は、期待に満ちている。
──確かに、育ちは良さそうだ。
渋ってはいたが、友人の期待(?)は裏切れなかったのか、折れたのは飯田だった。
「あぁ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ」
──ヒーロー一家!?
うわぁまじか、と内心でごちる。
早いうちに知ることができて良かった情報である。
しかし黙り込んだ終綴には気付かず、2人の反応に気を良くしたのか、飯田は続けた。
「ターボヒーロー・インゲニウムは知っているかい?」
──あぁ、あの。
ロボットのようなコスチュームが浮かんだ。
直接話したことはないが、パトロール中なら何度か見かけたことがあった。
あれは確か、東京でだっただろうか。
忙しい時に見かけただけのため、まじまじと見つめることは無かったのだが、確かに、爽やかな今どきのヒーローといった感じだ。
そうかあのようなヒーローが羨望を背負うのかと、終綴は内心納得をする。
インゲニウムは、都心での活動が中心だったと記憶している。緑谷のようにヒーローについて詳しいわけでもないので、記憶違いかもしれないのだが。
飯田は、兄に憧れて、ヒーローを目指しているのだと言う。
「……………」
自分の兄もヒーローなのだと言おうか迷う。
しかしそうなれば誰か当然訊かれる訳で、下手をすると家族についても話さなければならなくなる。
──やめとこ。
この話題については下手に触れるまいと決めた、その一瞬後。
ウーウー
けたたましく、警報が鳴った。