第5章 目を光らせて
「昨日の戦闘訓練お疲れ、Vと成績見させてもらった」
HRが始まるなり、相澤はそう言った。
数人にだけ言いたいことがあるらしく、教室を見回す。
「爆豪、おまえもうガキみてえ真似するな、能力あるんだから」
「………判ってる」
「で、依田…おまえ、もう手は抜くな。
把握テスト、手ぇ抜いてたろ」
長髪から覗く鋭い眼光が、終綴を射抜いた。
終綴はギクリと身を固くするが、クラスメイトたちは驚きのあまり、口をポカンと開け、脱力していた。
手を抜いて1位だったのか、と。
「手抜きで1位とれるほどの実力者だって評価なんですか私!?すごい!!!やばいね!!!!」
しかし、終綴はおどけて笑う。
「実際そうだったろ。…今後は大幅減点だからな」
相澤にしては温い忠告の後、話題はHRの本題に移っていった。
「急で悪いが、今日は君らに…学級委員長を決めてもらう」
ゴクリと固唾を飲んだのも束の間。
学校っぽいのきたー!!!
と教室中が嬉しそうな声に包まれた。
「委員長!!やりたいですソレ俺!!」
「ウチもやりたいス」
「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」
「ボクのためにあるヤツ☆」
「リーダー!!やるやるー!!」
ほぼ全員が挙手した。
ヒーロー科での学級委員とは「集団を導く」というトップヒーローの素地を鍛える役割を担うらしく、そうなるとやはり皆やりたがるらしい。
もっとも、終綴は数少ない例外のうちの1人だったのだが。
──学級委員になったら、それを理由に接触増やしてもおかしくはない、か………
──頭が良ければなお良し。
打算的な考えのもと、終綴は誰を推薦しようかと目論んでいた。
誰が委員になれば「効率がいい」のか。
それを細かく計算しながら、教室を見回す。
「これは多を牽引する責任重大な仕事だぞ!
投票で決めるべき議案ではないだろうか!!!」
誰よりもやりたがっていそうな飯田だったが、やはり真面目な性格からか。
そんな提案をし、相澤の承認によって投票が行われた。
結果。
「僕4票ーーー!!!?」
外見だけで言うと誰よりも頼りない緑谷に、決定したのだった。