第4章 推薦組vs.「別枠」
「あ〜、でも本当、緑谷と爆豪、凄かったね〜!!」
私も戦いたかったなぁ、と終綴は楽しそうに言う。
緑谷たち以外の生徒の戦闘訓練も終わり、残すところは終綴だけとなった。
しかしやはり終綴は興奮が冷めないのか、ずっと最初の戦闘について話しては楽しそうにしている。
瞳はきらきらと輝き、宝物を見つけた少年のようだ。
切島は「戦いたくはねぇかな…」と苦笑している。爆豪の緑谷に対する容赦のなさは、目の当たりにしたばかりだ。
あれを自分に向けてほしいとは、とてもじゃないが思えない。
「じゃあ次私だ!最後だねっ!行ってくる、応援しててね!!!」
「依田、行こ〜」
「いこいこ!」
終綴は、芦戸と仲良くモニター室から出ていった。
まるで遠足に行くかのような足取りである。
授業だから重い足取りであってもおかしな話だが、どうしてこうも軽くいられるのだろうか。
クラスメイトたちには、終綴が不思議でならない。
緑谷のように、────ないとは思うが────大怪我をする可能性だって、捨てきれないのだから。
それほどまでに自信があるのだろうか?
推薦組2人に勝てるだろうと思えるほど?
確かに、個性把握テストでの順位は1位だったけれど。
オールマイトも、「別枠」と言っていたけれど────
オールマイトが言うということは、相澤もそれで了承していると見て間違いないだろう。
オールマイトはヒーローとしてはトップであっても、教師としては新米である。
独断で特別枠を設けるとは考えにくい。
終綴のチーム────敵役、轟と八百万。
ヒーロー役、終綴と芦戸。
相手が2人とも推薦入試者だからからか、誰もがヒーロー役の勝利を確信していたのだが────しかし、個性把握テストで堂々の1位をたたき出した依田の活躍に注目が集まっているのも又、事実だった。
自信のありそうな終綴の態度にも、クラスメイトたちは注目していた。
先の戦闘(?)では、轟が圧倒的な強さを見せつけたばかりである。
それを見ていても尚、普段通り楽しそうでいられる意味とは?
終綴の実技成績が既に、歴代雄英生徒の中で「類を見ない」優秀さだと評価されているとは、このクラスの誰も知らなかった。