第4章 推薦組vs.「別枠」
「切島くんお疲れ!」
人の良い笑顔で話しかけてきたのは終綴だ。
今日初めて話すのだが、人懐っこい笑顔につられてか、サンキューな!と軽く返事をしてしまう。
中学では女子が近い距離にいなかったため、内心ドキドキである。
「切島くんってどんな個性なの!?
よく判らなかったけど、すごいね!!よく判んないけど!!」
よく判っていないのなら、凄さも判らないのではないか?
切島はそう思うも、口には出すまい。
褒め言葉は素直に受け取っておきたかった。
「俺の個性は硬化!
依田や爆豪みてーに、派手じゃないのがな…」
「爆豪くんのは派手だけど、私のは派手なんかじゃないよ」
はははと終綴は苦笑するが、切島は首を傾げた。
昨日のテストで見た限りでは、爆豪と終綴の個性は同じだった。
何か違ったのだろうか?
ただ1つあるとすれば、個性の使用後に終綴が痛がっていたということくらいだが、それは派手さに関係ないはず。
しかし、切島が疑問に思うに様子に気付いてもなお、終綴はそれに答えようとはしなかった。
そして話を逸らすように、
「派手と言えば緑谷だよ!!轟も凄かったね!!」
と目を輝かせた。
「そうだな…ってか、依田、轟とじゃん」
しかも、轟のペアは八百万である。
推薦入学者組と、昨日のテストで1位だった者との戦いを見たいとは思うものの、それにしたって終綴には不利すぎやしないだろうか。
切島含め、クラスメイトたちは皆、そう思っていた────…オールマイトと、終綴本人を除いて。
──依田少女、ペア要らなかったかな…
形だけでも公平を表すために2対2で行ったものの、果たしてこれは正解だっただろうか。
入試での彼女の動きを見ていたオールマイトにとって、これは1つの不安だった。
早く片がつきすぎてしまうのではないか、と。
そして終綴とてそれは同じこと。
──これ、私めちゃくちゃ有利だなぁ。
自分の個性は、対人戦闘において本領を発揮する。
中でも特に、敵が強い個性を持っている場合。
敵の個性が強力であればあるほど、自分の個性は強さを増す。
だから、クラスメイトたちの心配は終綴にとって杞憂でしかないのだが──────…