第4章 推薦組vs.「別枠」
「私に全部やらせてね」
好戦的に瞳が光る。
芦戸は出番が2回目の為、体力が減っている事もあり、また、終綴の個性をもっと見たいという好奇心も合わさってか、うん、と頷いた。
「行きますか」
ふぅ、と終綴は目を閉じて深呼吸した。
拳を軽く握りしめる。
芦戸ちゃんは外出てて、と建物外に行かせて、終綴は薄らと笑みを浮かべた。
そして、右足を踏み出す。
パリパリ…
少し前にモニター室で見たはずの光景が、目の前に広がっていた。
一瞬で凍らされるビル。
終綴の個性は爆豪と同様のものだったはずなのだが────終綴には個性が2つあるのだろうと納得をする。
モニター室ではトップのぶつかり合いに固唾を飲んでいたが、すぐに決着がついたのだと理解した。
ゆっくりと凍った地面を踏みしめながら終綴が階上にのぼると、そこには固まっている2人の適役の姿があった。
轟は熱で溶かそうとしているが、なぜか炎が出てこない。
そして八百万も、発動させようとした個性が使えないことに気づく。
「「!?」」
戸惑う推薦組。
「な、なぁ…何だ、あれ…………?」
切島の引き攣った声が、モニター室を震わせた。
凍らせるのは、轟の個性だった筈。
しかし、終綴の個性は爆破────爆豪と同じものではないのだろうか?
2つ個性があるという可能性もあるだろうが、それなら今の、脚から発生している太縄は何だろうか?
「個性、3つ…は、聞いたこと、ないもんね……」
「なぜ2人とも、自分の個性で抵抗しないんだ?」
麗日たちの呟きは、皆が思っていることだった。
爆豪でさえも、ぽかんとして画面に見入っている。
そして画面の向こうでは、終綴は発生させた太縄で2人をぐるぐると縛り付けていた。
ついでと言わんばかりに捕獲テープでも2人を縛り、自由を完全に奪う。
「先生、私たちの勝ちって事でOK?」
あまりにも一瞬、呆気ないその終わりは。
クラスメイトたち全員が沈黙した。
『あ、あぁ…ヒーローチーム、win!』
轟も八百万も、悔しそうに宙を見つめていた。
終綴はにっこりと笑った。
「レベルが違いすぎて、ごめんね?」