第4章 推薦組vs.「別枠」
「始めようか有精卵共!!!
戦闘訓練のお時間だ!!!」
オールマイトの力の篭った言葉に、皆が前を向いた。
皆様々なコスチュームで、個性溢れていたが──その中に、異端が1人。
彼女もまた、個性には溢れていたのだが────それも、「ある意味で」だ。
普通ならコスチュームにこんな格好は選ばないだろう。
「あれ、依田さん、それスーツだよね?」
黒のパンツスーツ。
ワイシャツも色は黒く、ネクタイだけが白い。
ジャケットこそ羽織っていないものの、完全にスーツである。
着用しているマスクも相まって、彼女の服装は異様に映った。
背はさほど高い訳でもなく、容姿は可憐と言って差し支えないのに、なぜか雰囲気にはぴったりマッチしていた。
威圧感というか、貫禄のようなものが醸し出ている。
しかし、いくら似合っているからとはいえ、────シャツが黒となると男性ものではないだろうか?
制服も似た形ではあるから判るのだが、ワイシャツというだけで動きづらい。
ネクタイも、引っ張られてしまえば首を絞める凶器になりうる。
なぜわざわざ動きづらい服装にしたのだろうか。
激しく動くことが基本であるのは知っているはずなのに、と依田のチョイスは今ひとつ理解できない。
「そう、スーツ。これが1番着慣れてるから」
──着慣れてる?男性用のスーツなのに?
黒のワイシャツとなると、テレビで芸能人やハリウッドスターが着ているものくらいしか見たことがない。
そもそもスーツ自体、自分たちの年では着る機会がないというのに、着慣れているとはどういうことか。
何故色を黒にしたのかも判らない。
…スニーカーは白だし。
バイトでもしているのだろうか?
しかし、高校生になるまでの間は、法律上働くことができない。
例外的に認められているのは、子役や牛乳配達などのみだ。
しかし終綴はテレビなどで1度も目にしたことがないし、牛乳配達にしても子役にしても、スーツを着る機会などないはずなのだ。
「それってどういう…」
「あ、デクくん!?かっこいいね!!」
詳しく聞こうと思ったが、麗日によってそれは遮られた。